遺産を分ける割合は民法で定められた法定相続分が基準となりますが、地域性、片親が存命か、実家が空き家になるなど、状況により様々な考え方や分け方がありますので一般化はできません。そこで遺言書が無い場合は、おおよその財産が判明し、相続人が特定できた後(または同時進行)は遺産をどのように分けるかの家族の会議を行います。本来であれば故人の生前に一緒に話をして方向性を決めておけば相続の話し合いもスムーズなのですが、そういうご家族は少ないのではないでしょうか。
片親が存命の場合は、その方の今後の暮らしを第一に考えたうえで片親の相続を見据えた内容になる場合が多く、感情的になる相続人も少ないように感じます。問題となるのは、両親が亡くなり、相続人が兄弟姉妹だけになった場合です。重しとなっていた片親が亡くなった相続は、声の大きい人の意見が目立ったり、今までの不満が一気に噴出するため、話がまとまらなくなる可能性が大きくなります。また、実家が空き家となってしまう場合も多く、実家の処分方法も決めなければいけなくなります。
【家族会議で気を付けること】
①人から聞いた知識で発言しないこと
友達から聞いた、雑誌で見たなど、専門家以外から自分が見聞きした情報で意見を言う方が多いのですが、家族内容や財産内容により民法上の基準や相続税の計算の仕方が違ってきますので、自分の相続手続きでは間違いとなる場合があります。特に寄与分や特別受益は間違った知識が多く、その結果感情的な問題となることが多いので注意が必要です。
②感情で発言しないこと
過去のことやポイントがズレた発言を行うと感情論になってしまいます。感情的な会議は時間を浪費するだけで無駄に時間が過ぎるだけです。
③声の大きな人の意見で進めないこと
議長となって話を進める人は必要ですが、声が大きい人が話を進めると途中で揉めることになります。必ず全員の意見を聴くような会議としましょう。必要であれば感情的になる前に相続人全員に対し、専門家に法律的な説明をしてもらいながら進めることも有効です。
【家族の会議をスムーズに進めるポイント】
①正しい法律の知識を土台とした話し合いをする
遺産分割は民法の相続分とは関係無しに相続人の話し合いで自由に分けることができます。しかし、話し合いの土台は法律であり、万が一もめて調停や裁判となった場合は法律が基準となることは当然です。そのため正しい法律知識をもとに、感情論やズレた発言を避けた話し合いをすることはスムーズに会議を進めるためには絶対に必要です。
②正確な財産調査を行って話し合いをする
相続財産にどの位の価値があるかどうかを確認しておくことは大変重要です。預金や上場株式であれば価値は明確ですが、問題となるのは不動産です。
路線価やチラシの売り出し価格などから各自想定するようですが、相続人によって期待する価格が違う場合もよくあることです。また、不動産は多くの問題を抱えてしまう財産で、期待する利用方法ができなかったり、致命的な問題により価格が相場よりも下がってしまったりすることもあります。
空き家を売却したり、特定の相続人が利用したりする場合は、事前に不動産の調査をしてもらい「不動産の利用価値と価格」の調査書を取得しておいて相続人全員の目線を合わせておくことが重要です。
③専門家に業務を依頼する
相続人間で感情的になってしまってから専門家に相談したのでは遅いので、話し合いを始める前に専門家のアドバイスを受けてください。専門家から相続人に法律上の割合、財産の内容、処分するときの費用、スケージュールなどを説明してもらうことで、ポイントを絞った話し合いができます。