Ⅰ5⑥特別受益

相続の基礎知識 相続の基礎知識

 亡くなった方(被相続人)から贈与(遺贈、死因贈与含む)された財産(あわせて特別受益という)を受けた者(特別受益者という)は、相続分の前渡しを受けたものと扱います。遺産分割では特別受益を遺産に含めて(持ち戻しといいます)自分の相続分を計算します。

特別受益者の範囲

  1. 原則として共同相続人に限られます。
    ※相続放棄者は特別受益者にはなりません。 
    ※相続人以外の者(相続人の配偶者や子供)に対する贈与は原則特別受益にはなりません。
  2. 被相続人が死亡する前に相続人が死亡していた場合、その相続人の特別受益は代襲者の特別受益にあたります。
  3. 代襲者への贈与は、代襲原因(相続人が無くなった日)が発生する前の贈与は特別受益にあたりません。発生した後の贈与は特別受益にあたります。

特別受益者がいる場合の相続分の計算

特別受益があるときの相続分計算の流れ
  • ステップ1
    みなし相続財産を合計する

    (相続開始時の相続財産の総額)+(特別受益の総額)=みなし相続財産
    ※特別受益の価額は、相続発生時の価格に直して計算します。
    ※遺贈の場合は、遺贈財産の価額が相続財産の価額に含まれているため加算する必要はありません。

  • ステップ2
    仮の相続分を計算する

    (みなし相続財産)×(法定又は遺言指定の相続分率)=仮の相続分

  • ステップ3
    最終的な相続分を計算する

    (仮の相続分)ー(その相続人が受けた特別受益額)
    ※マイナスとなっても他の共同相続人に返還する必要はありません。

特別受益になるケース

  1. 遺贈された財産・・・相続人に対する特定遺贈、包括遺贈は常に特別受益
    ※遺贈や死因贈与による配偶者居住権も該当する可能性があります。           
  2. 婚姻・養子縁組・生計の資本のための生前贈与された財産
    ※持参金(挙式費用や結納金は除く)、事業の開業資金、土地建物、マイホーム購入資金、家業を継ぐ子への事業用資産(農業の農地、法人の株式)の贈与

※大学の学費は他の相続人とのバランスや被相続人の収入・生活を総合的に判断して特別受益かどうかが判断されます。
※贈与税非課税(税法)の年間110万円以下の暦年贈与でも特別受益(民法)にあたります。
※生命保険金は相続財産ではないので特別受益になりません(著しく不平等なものは除く)。
※死亡退職金は相続財産ではないので特別受益になりません。

持ち戻し免除のもの(みなし相続財産にいれなくていいもの)

・婚姻期間20年以上の夫婦での居住用不動産の贈与又は遺贈
・被相続人が遺言書などで「特別受益として扱わない」としていた財産(持ち戻し免除の意思表示)

※遺産分割で持ち戻し免除とされた財産も、遺留分の計算としての持ち戻しは対象となります。
※遺留分を計算するときの持ち戻し対象の特別受益は、相続開始前10年間(相続人の場合)ですが、遺産分割の持ち戻しの対象となる贈与の時期に制限はありません。
詳しくはこちらの遺留分の説明をご覧ください

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  • 執筆日以降の法改正等により記載内容に誤りが生じる場合があります。当事務所は、本記事の内容の正確性についていかなる保証もしません。万一、本記事のご利用により損害が発生した場合においても、当事務所は一切の責任を負いません。
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