アパートなど賃料収入のある財産の相続では、家賃収入は誰のものになるかということが問題になります。有効な遺言書があれば、遺言書によって指定された相続人が相続開始時から賃料を受け取ることができます。問題となるのは遺産分割を行う場合で、「相続開始前の賃料」、「相続開始後から遺産分割協議成立までの賃料」「遺産分割協議成立後の賃料」の3つで行き先が違ってきます。
遺産分割協議での賃料収入の帰属
相続開始前の賃料
相続開始月分までの賃料(未収賃料含む)は相続財産として遺産分割の対象になります。
相続開始後から遺産分割協議成立までの賃料
遺産分割協議が成立するまでの間、賃料を生む不動産は法定相続分で共有状態になります。共有状態から生じた賃料は、持分割合で各自単独で取得することになりますので、共同相続人が法定相続分により単独で取得します。
民法では、遺産分割は相続開始後に遡って効力を生じると定められていますが、相続開始後の賃料の帰属については遺産分割の影響は受けないという最高裁の判決があります。つまり相続開始から遺産分割時までに生じた賃料は賃貸不動産を相続した人は法定相続分以外は取得しないことになります。
遺産分割成立後の賃料収入
遺産分割成立後は当該取得者が全て取得することになります。遺産分割により共有から単独所有になるためです。
相続不動産の賃料収入の各種手続き
賃料の清算方法
共有者が持分に応じて単独で取得するといっても、賃借人は指定された銀行口座に一括で振り込みするのが一般的です。金額が多ければ都度清算してもいいですし、相続発生後から遺産分割成立までの賃料は相続財遺産ではありませんが、相続人全員が同意すれば遺産分割手続きで一緒に清算する場合も多くあります。
賃料収入の確定申告
相続発生前の賃料収入は被相続人の準確定申告を行います。遺産分割を行う場合の相続発生後から遺産分割成立までの家賃収入は、各相続人の法定相続分での収入として、各自が確定申告しなければなりません。賃料収入が多い場合や協議が長引いている場合は分割協議成立前に都度清算すると安心です。
賃料を清算してくれない場合の訴訟
相続発生後の賃料は相続財産ではありませんので、清算してくれないなどのトラブルは家庭裁判所で扱うことができません。民事訴訟を提起する必要があります。
ここまで一般的な内容の説明をしてきましたが、税務申告や清算トラブルなどの個別相談は早めに税理士や弁護士にしたほうがいいでしょう。