Ⅱ2②私道

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 私道がある場合は不動産取引でも特に注意する必要があります。私道に接している不動産を相続する人もぜひ問題を理解して遺産分割前に調査することをお勧めします。私道の場合のポイントは、相続税の評価、通行できるか、上水道管などインフラを道路に埋設することができるかどうかです。なお、相続登記時に持分の登記を忘れている事例がたまにあります。そうなると名寄せ台帳に載っていないこともあり、時間が経つと相続人が増えて相続手続きが大変になります。不動産業者であれば持分が無いとおかしいと直ぐに気が付くのですが、不動産実務を知らない士業では無頓着の方もいるようです。

私道とは

 私道とは個人や法人が所有する土地で道路になっているものです。私道でも建築基準法の道路か単なる通路かは不動産の価値を左右する重要な要素です。道路の種別はこちらをご覧ください。

現地での私道の見分け方(最後は市区町村の担当部署で確認してください)
道路にある下水道のマンホールに市区町村のマークがなければほぼ私道で、道路周辺の家で共同管理している私設の下水共用管です。
また、公道からの入り口が一体として作られていない場合、公道の側溝が横断しており、その先は私道の可能性が高くなります。
私道の写真

建築基準法の私道では次の3つが数多く存在します。

建築基準法の私道

位置指定道路
 この土地を建築基準法上の道路として認めてくださいという申請をして認められた道路で、小規模戸建て開発でよくある道路です。市区町村役場で位置指定道路図が取得できますので図面と現況が同じかどうかを調べます。相違していると建築できない場合があります。
相続税の評価で問題となるのは、位置指定道路はほとんどが行き止まり道路で特定の者が利用する場合が多く、その私道の評価は宅地評価の3割で評価されます。

開発道路
 都市計画法により開発許可が必要な戸建て開発などによって作られる道路。道路形状や行政の基準によって公道とはならず私道となる場合も多くあります。
 開発許可の手続きが必要となる開発土地面積は行政によって違い(一般的には500㎡又は1000㎡以上)、基準未満の戸建て開発の道路は上記位置指定道路となります。

2項道路
 建築基準法が施行された日(1950年11月23日)以前から存在していた幅員が4m未満の道路で、特定行政庁が指定した道路です。明治大正期に市街化された古い住宅地でよく見られる道路です。建築をする場合は、原則道路中心から両側それぞれ2mバックして道路にすることにより、将来的には全て4m道路になります。
相続で2項道路が出てくるのは相続税の評価です。不特定多数が通行する私道は評価0で、セットバックしていればその部分も評価0となります。しかし、駐車場など建築をしていない場合はセットバックをする必要がなく、今はセットバックしていないが建築時にセットバックしなければならない部分は宅地評価の3割で評価されます。

権利形態による私道の種類

 私道の所有権の持ち方として分筆型と共有型があります。法務局で下記のような公図を取得するとどちらの型か分かります。分筆型私道は土地を細かく分けてそれぞれの土地を単独で持ち合っています。共有型は道路部分の土地は1つで、皆で共有しています。

私道の権利形態

私道と通行する権利

【共有型】
 共有型では、民法の共有の規定により、各共有者は持分に応じた使用をすることができますので、通行は可能です。なお、共有持分が無くても建築基準法上の道路であれば通行できます(自動車は別の要素があるため個別状況により判断されるようです)。
【分筆型】
 開発当初から分筆型の私道であった場合は、相互に黙示的に通行地役権が設定されているとされることが多く、私道全体を通行することができます。

私道に水道管などのインフラ設備を埋設する権利

【共有型】
 民法改正前でも共有者は道路にインフラを埋設し利用する権利はあるとされていましたが、水道事業者や工事会社がトラブルを恐れて所有者全員から掘削承諾書の取得を求めていました。民法改正により、他人の土地に設備を埋設したり、他人の設備を利用したりする権利が明文化され、共有持分がない人も、場所や方法などを所有者に通知(実際には相談)して工事ができることになりました。
【分筆型】
 開発当初からや長期間インフラが埋設されている場合、私道を構成する土地の提供者は、相互に、地上の通行だけではなく、通路の地下に、公道に設置されている配水管に接続するための給水管を設置することを明示又は黙示に承諾していたものと考えられます。法務省民事局のホームページに掲載されているガイドラインでも、民法改正により、他人の土地に給水管を埋設工事することや既存の私設給水管に新規接続することは土地所有者の同意を得なくても通知を行った上で行うことができるとしています。

ライフラインの埋設はできるようになったが・・・

 インフラ設備の埋設工事に関しては、民法改正によって致命的な問題は減っていくと思いますが、ご近所トラブルの問題は残りますので引き続き注意が必要です。
 また、引き込まれている水道管の口径が13mmの場合は、水圧が低く、複数個所で水道を利用するとちょろちょろしか水が出ず、3階では水道が使えません。25mmの口径に取り換える工事が必要ですが、前面道路の私設共用管が細く、口径を大きくすると他の家に影響がでる場合があります。この場合は単独で公道から宅地まで私道の下に設置する工事を行いますが、費用は余計にかかります。私道の調査時には水道局で水道管の確認をしてください。

個人名義の公道

 市区町村道として管理されていても個人や法人が所有している道路も数多くあります。管理権限は市区町村に移譲されているので通行や水道管工事などがトラブルになることは滅多にありません。しかし、道路と敷地の境界を確認する場合、市区町村が行うのは「管理境」であり、所有権の境は所有者と行うため所有権の境界でトラブルになる場合もあります。
 公道だからと安心せずに法務局で自分の宅地が接道する道路の所有者は誰なのかを確認してください。

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