相続欠格と相続人の排除があると、相続権が認められる者であっても、相続権が剥奪され相続できなくなります。なお、相続欠格者や排除者に子がいる場合には、その子が代襲相続人になります。
相続欠格
配偶者・子・直系尊属(親など)において、下記相続欠格になる事由がある者は、当然に相続権が無いものとして扱われます(家庭裁判所などの手続きは必要ありません)。
小説や薬師丸ひろ子さん主演の映画「Wの悲劇」は相続欠格を使ったストーリーで有名です。
<相続欠格になる事由> ①殺人等に関する行為 ・被相続人や相続人を殺害したり、殺害しようとして刑に処せられた者 ・被相続人が殺害された事を知っても、告発・告訴しなかった者(殺害した者の配偶者や直系血族は除く) ②遺言書に関する行為 ・詐欺や脅迫によって、被相続人の遺言の作成・撤回・取消し、変更を妨げた者 ・詐欺や脅迫によって、被相続人に、相続に関する遺言の作成・撤回・取消し、変更をさせた者 ・相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
相続人の排除
ある相続人について、被相続人が相続させたくないと感じるような下記のような非行があった場合には、被相続人が生前に家庭裁判所に請求するか、遺言で排除の意思表示をすることによって、その者の相続権を奪うことができます。
<排除事由> ①相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱をしたこと ②相続人に対し①以外の著しい非行があること(例:父の財産をギャンブルで使い込み、父が自宅を売らざるを得なくなった子供)
排除の対象となる相続人は第1順位グループ(子)と第2順位グループ(直系尊属)で、第3順位グループ(兄弟姉妹)は対象ではありません。これは兄弟姉妹には遺留分がないことから、遺言で財産を与えないということができるためです。
※生前に家庭裁判所に排除を請求し、排除の審判が確定するか調停が成立すると相続権を失い、戸籍で公示されます。
※遺言排除の場合は、遺言執行者が速やかに相続人の排除を家庭裁判所に請求しなければなりません。
※生前排除は、請求者からいつでもその取消しを家庭裁判所に請求することができます。
※遺言排除は、新たな遺言によりこれを取消すことができます。
相続欠格者や相続人の排除者への被相続人からの遺贈
かなり特異な状況で実例は少ないと思いますが、相続人の排除の場合は、被相続人から遺贈を受ける権利は失いません。しかし、相続欠格者の場合は遺贈を受けることもできません。