Ⅰ5②遺言がある場合の手続き(遺言執行)

相続の基礎知識 相続の基礎知識

 遺産を分ける手続きとして「遺産分割協議」がありますが、故人が遺言を残していた場合はどうしたらいいのでしょうか。遺言は故人の遺志が書かれたもので、この内容を尊重することが大切だと思います。ここでは遺言を発見したあとに必要な手続きをご説明します。

遺言の基礎知識

 ほとんどの遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言という形で作成されています。両者の効果は同じですが、発見後の手続きに違いがあります。遺言の内容を実現することを遺言執行といい、遺言執行をする人を遺言執行者といいます。

基本は遺言に書かれている内容を実現させる

 遺言には不公平な内容で特定の相続人の遺留分を侵害していることも多々ありますが、基本的にその通りに遺言執行します。なお、民法で定める遺留分のある相続人は、相続の開始かつ遺留分が侵害される遺言書を知ったときから1年以内に遺留分侵害額請求をすることができます。
 遺留分についてはこちらをご覧ください

遺言があっても遺産分割協議で分けることは可能

遺言があっても、相続人全員(遺言に贈与する第三者が居ればその第三者も)が納得した場合は、全相続人で遺産分割協議を行って分割することは可能です。
 遺産分割協議についてはこちらをご覧ください

遺言執行の流れ

遺言書が発見された場合は、自筆証書遺言と公正証書遺言によって手続きがちがいます。
遺言書の探し方はこちらをご覧ください。

ステップ1 発見・検認・開示

自筆証書遺言があった場合

 遺言書の保管者や発見した相続人は、死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所で検認を請求しなければなりません。遺言書の検認を申し立ててから検認期日までの期間は、だいたい1~2カ月程度です。また検認の申し立て添付の戸籍謄本取得期間も含め、遺言書発見から検認の手続きを終えるまでは、2~3カ月程度はかかると考えておくのが良いでしょう。

※封印がされた遺言書を発見して開封すると「5万円以下の過料」が科されます。相続人の間でトラブルにもなりますので絶対に開封しないでください。
※公正証書遺言の場合は検認手続きが不要です。
※法務局保管の自筆証書遺言は検認が不要です。法務局で遺言書情報証明書を取得してください。
検認手続きの手順
  • 検認の申立て

    家庭裁判所にて検認の申し立てをします。
    ①申立者・・・遺言書の保管者、遺言書を発見した相続人
    ②申立先・・・遺言者(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
    ③申し立てにかかる費用
    ・収入印紙800円分
    ・連絡用の郵便切手
     詳しくはこちらの「検認の申立て(裁判所HP)」をご覧ください。

  • 2
    検認期日の連絡

    検認の申し立てをすると、家庭裁判所から法定相続人全員に対して「検認期日(検認を行う日)」の通知があります。申立人は指定された日時に家庭裁判所に行かねばなりませんが、申立人以外の法定相続人は出席してもしなくても検認手続きは行われます。

  • 3
    検認期日(当日の流れ)

    指定された日時に家庭裁判所に行くと、出席した法定相続人の立ち会いのもとに遺言書が開封され、中身が確かめられます。申立人には遺言書の発見状況などについて質問される場合もあります。
    ①申立人の持参するもの・・・遺言書、申立人の印鑑、そのほか担当者から指示されたもの
    ②申立人が遺言書を提出し、出席した相続人等の立会のもと、裁判官が、封がされた遺言書については開封の上で遺言書を検認します(封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。)。
    ③検認済証明書の申請
    検認が終わったら、「検認済証明書」を申請(遺言書1通につき150円の収入印紙と申立人の印鑑)してください。検認済証明書がついていないと不動産の登記や銀行での預金払い戻しなどに応じてもらえないので、必ず申請しましょう。

※申立人以外の法定相続人には事前に申立と家庭裁判所から連絡が来る旨を伝えておいてください。
※検認を受けているから遺言書が「有効」というわけではありません。「検認」とは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
※遺言書の作成に疑義があったり、遺言書の内容に不備があるなどして不服がある相続人がいた場合は、「遺言無効確認調停」や「遺言無効確認訴訟」となる可能性があります。

公正証書遺言があった場合

公正証書遺言がある場合で遺言書の中に遺言執行者が指定されていれば、その者が全ての相続人や遺贈者に内容を開示し遺産分割を進めていきます。指定されていなければ発見した者が全相続人や遺贈者に内容を開示します。

ステップ2 遺言の執行を担う遺言執行者を決める

 遺言を執行するとは、相続財産の保管・引渡し・解約・不動産登記などの手続きを行ことです。遺言執行者が遺言の中で指定されていればその者が、指定されていない又は指定されていたが死亡していた場合は家庭裁判所に申立てて選任してもらいます。遺言執行者に専門資格は必要ありませんができれば費用が発生しても精通した専門家に依頼することをお勧めします。なお、遺言執行者は必ず居なければいけないというものではありませんが、単独で遺産分割手続きができますので煩雑な相続手続きをスムーズに進めることができますので有用です。
※未成年者と破産者は遺言執行者になれませんが法人は可能です。
※遺言執行者の報酬は遺言で定めるができ、定めが無い場合は家庭裁判所に「遺言執行報酬付与審判申立て」を行い裁判所に報酬を決定してもらうことができます。
 遺言執行者を選任する場合はこちらの裁判所HPをご覧ください。

ステップ3 遺言内容の執行

最後に遺言の内容通りの遺産の分割作業を行います。非常に煩雑な作業のため二度手間三度手間となることはしばしば発生します。必要書類など事前の確認をしておきましょう。

遺言執行の流れ
  • 1
    正確な相続人を特定する

    故人の生まれてからの戸籍謄本を取得して、相続人を調査します。時間がかかりますので早めに着手する必要があります。なお、自筆証書遺言の検認申立てをした場合はこの作業は完了しています。

  • 2
    遺言執行者による遺言内容の通知

    遺言執行者に就任したときは直ちに任務を開始し、遅滞なく全相続人へ遺言内容を通知しなければなりません。また、受贈者や金融機関にも遺言内容を通知するようにします。

  • 3
    相続財産を調べる

    遺言作成時から財産が変化することは多々あります。そのため被相続人の死亡時の財産を調査します。調査が終了したら財産目録を作成して相続人や受贈者へ報告します。なお、遺言に記載の無い財産があった場合は、相続人が遺産分割協議で分割方法を決めることになります。

  • 4
    財産移転の手続き

    相続する財産ごとに必要書類を集めて各機関で預貯金の解約・送金、株式の移転、不動産登記などの手続きを行います。不動産を売却して遺贈する場合などは不動産の売買活動も行います。

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  • 執筆日以降の法改正等により記載内容に誤りが生じる場合があります。当事務所は、本記事の内容の正確性についていかなる保証もしません。万一、本記事のご利用により損害が発生した場合においても、当事務所は一切の責任を負いません。
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