借金などの債務は相続財産ですので法定相続人は相続することになります。ここでは債務の相続についてご説明します。
債務の相続の仕方
民法は、「相続人は、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めていて、債務も相続により承継されます。遺産分割が必要な相続財産ではありません。
相続人が1人の場合は、当該相続人が被相続人の債務を承継することになります。相続人が複数の場合は、各相続人に対しその法定相続分に応じて分割して承継されます。貸している人(債権者)は、各相続人に相続分の割合までの金額を請求でき、それ以上を請求されても返済する必要はありません。
それでは、遺言があった場合や遺産分割をした場合はどのような取り扱いになるのでしょうか。
遺言がある場合
被相続人が遺言により債務を法定相続分と異なる相続分で定めてあったとしても(特定の相続人に債務を全て引き継がせるなど)、無効となり債権者に主張することはできません。
遺産分割協議をして協議書がある場合
債務は遺産分割の対象財産にはならないのが原則です。しかし、共同相続人が同意すれば債務を遺産分割の対象にすることは可能です。しかし債務について遺産分割協議で法定相続分と違う割合の相続分を決めたとしても、債権者には効力が及びません。必ず債権者の同意が必要となります。
なお、債権者の同意を得ずに遺産分割を行って債権者が不利益を受けた場合、債権者は詐害行為取消権に基づき行為の取消しを裁判所に請求できます。
個人向けの債務の種類と返済
銀行の融資
相続の対象となる個人向けの融資としては、「証書貸付」「カードローン」「総合口座貸越」が一般的です。
種類 | 内容 |
---|---|
証書貸付 | 金銭消費貸借契約を交わして行う融資。多くの融資はこの形をとる。(例:住宅ローンなどの目的別の融資) |
カードローン | カードの利用や払戻請求書の提出により、一定の金額まで金銭を貸し付ける融資 |
総合口座貸越 | 普通預金の残高が不足した場合に、総合口座に預け入れられている定期預金等の一定額まで不足額を自動的に貸し付ける融資 |
証書貸付は約束の返済日の到来とともに相続人に返済義務が生じます。これに対し、総合口座貸越は、相続の開始があったときに直ちに返済するものとし、相続開始時に貸越元利金と定期預金が相殺できるとする条項があるのが一般的です。
カードローンは相続開始時に直ちに一括返済するという規定が多かったのですが、令和4年6月に金融庁は、相続開始後の一括返済を求めないように金融機関に要請しました。金融機関にて対応が違うと思いますので金融機関に確認してください。
クレジットカード
クレジットカード自体は相続財産ではなく引き継ぐことはできませんが相続開始時の未払い分は債務として相続されます。引き落とし銀行口座が凍結されていると引き落としができなくなりますのでクレジット会社に連絡をして対応を確認してください。
なお、リボ払いの返済は、一括返済か同条件を引き継ぐのかはカード会社によって違いますので個別に確認してください。
債務に対する相続人の対応
債務を相続する相続人は「単純承認」または相続開始を知った日から3ケ月以内に「限定承認」「相続放棄」を選択できます。くわしくはこちらの「相続の承認・相続放棄」をご覧ください。
単純承認の場合
事業用の借入と事業を引き継ぐ特定の相続人、アパート購入資金とアパートの相続人などは、金融機関としても債権を管理する上で特定の相続人だけが債務を引き受けた方がメリットとなります。そのため、債務を引き継ぐ場合は金融機関と相談しながら相続手続きを進める必要があります。
一部の相続人が相続放棄した場合
相続放棄をした相続人は、初めから相続人ではなかったことになりますので、残りの相続人で法定相続分によって債務を承継します。
全員が相続放棄をした場合
金融機関は、相続人がだれも存在しなくなった場合、不動産などの相続財産から回収の見込みがある場合は、金融機関が自ら相続財産清算人の選任を申立て、相続財産清算人を相手に貸金の回収手続を行います。
相続放棄をすれば債務(借金など)を背負わなくて済みますが不動産の管理については責任が残る場合がありますので注意してください。